骨盤底筋トレーニングは子宮脱に効果あるが、それは症状が軽い時だけ

こんにちは。骨盤底筋パーソナルトレーナーの北條ゆきえです。
胴体の一番底にあり、骨盤の内側にある筋肉を骨盤底筋といいます。
この骨盤底筋は内臓を支えたり、排泄をコントロールしたりする筋肉です。
この骨盤底筋が弱くなると、膣めがけて膀胱や子宮、直腸などの臓器が落ちてきます。
一般的に知られているのは子宮が落ちてくる子宮脱ですが、膀胱が落ちてくる膀胱瘤や直腸瘤というのもあります。
このような、膣から臓器が落ちてきてしまう病気を骨盤臓器脱と言い、女性特有の病気なのです。
女性の骨盤底筋が弱くなると起こる病気、それは骨盤臓器脱(子宮脱)
どうして骨盤底筋が弱くなるの?
今後に不安なAさん
骨盤底筋の筋力低下の原因には下記のようなことがあります。
- ひどい便秘(排便時のいきみ)
- 日常的に重いものを持ち踏ん張る
- 凄く息むスポーツを毎日している
- 膣からの出産経験がある
- 運動不足によるもの
子宮脱(骨盤臓器脱)になると膣の違和感が出てくるため日常生活に支障をきたします。
膣から何かが落ちてきたと初めて感じた時、それは比較的早い段階で症状は軽い時です。
この症状が軽い時が大切で、この時に骨盤底筋トレーニングをすれば子宮脱の症状が良くなると言われています。
しかし、子宮脱(骨盤臓器脱)が進んで膣から完全に出てしまうと骨盤底筋トレーニングの効果はなく、リングペッサリーや手術の選択肢しかなくなってしまいます。
- 産後に子宮脱を経験したことがある人
- 現在、子宮脱の人
- これから骨盤底筋の筋力低下が心配な人
もくじ
骨盤底筋トレーニングは本当に子宮脱に効果があるのか
骨盤底筋トレーニングが子宮脱(骨盤臓器脱)に効果が本当にあるのかいろいろな研究がこれまでにされています。
そして、これらで言われている効果は子宮脱の程度によって異なるということです。
骨盤臓器脱には、骨盤臓器脱の程度を表す指標があります。
【骨盤臓器脱の程度を表すPOP-Q指標】
ステージ0 | 出ていない |
ステージⅠ | ステージ0の状態でなく一番下がっている所が膣の入口付近から1㎝以上上にある |
ステージⅡ | 最も下がっている所が膣の入口付近から1㎝上と1㎝下の間にある |
ステージⅢ | 最も下がっている所が膣の入口付近から1㎝以上下にある |
ステージⅣ | 後ろの膣の壁が完全に出ている |
このPOP-Qのうちで、ステージⅡまでの子宮脱(骨盤臓器脱)に効果があると言われています。
POP-QステージⅡの17名の日本人女性を対象に16週間の骨盤底筋体操を継続した結果
【結果】POP-Qステージは介入前に比べ介入後に改善5名、悪化2名、変化なし10名となり介入より膣壁の下垂は維持あるいは改善する傾向にあった。
【結語】軽度POP(骨盤臓器脱)患者に対して骨盤底筋体操を実施しその効果を検討した。その結果、骨盤底筋の最大収縮時膣圧の増大、下垂部の挙上、排尿や排便に関する症状やQOLを改善させる可能性が示唆された。
参考文献:「中高齢女性における軽度骨盤臓器脱に対する骨盤底筋体操の試み」
大内ら(2016)、理学療法学 第43巻第6号453~469頁
その他の骨盤臓器脱への骨盤底筋トレーニングの効果を調べた研究でも、ステージⅡまでの比較的症状が軽い女性たちを対象にしたものです。
そして、これらの研究で骨盤底筋トレーニングは、POP-Qステージの改善や症状の改善が期待できるとしています。
これで何を言いたいの?
今後に不安なAさん
何を言いたいのかというと、骨盤底筋トレーニングが有効なのはステージⅡまでの人たちということ
ゆきえ
骨盤臓器脱の程度がステージⅢを過ぎると骨盤底筋トレーニングが効果あるとは言えないということです。
骨盤底筋トレーニングで子宮脱を良くしたいなら早いうちから
骨盤底筋トレーニングは、子宮脱(骨盤臓器脱)有効だけど、有効なのはステージⅡの比較的症状が軽い人たち。
ということは、子宮脱(骨盤臓器脱)の早い段階から骨盤底筋トレーニングをすることが重要となります。
子宮脱(骨盤臓器脱)は、膣から下がってきたからといって、その後急激に落ちてくるものではありません。
症状が悪化するまでの経過は実に緩やかなのです。
ですから「あれ?膣に違和感」、「夕方に膣がおかしい」と気づいた早い段階から積極的に骨盤底筋トレーニングを行えば症状が良くなる可能性はとても高いのです。
それなのに、何もせず放置しステージⅢになって慌てても骨盤底筋トレーニングの効果は低くなり、リングペッサリーか手術の対応だけになってしまうのです。
今、子宮脱のような症状がなくても
- 産後に子宮が出てきたけど今は良くなった人
- お産が大変だった人
このような人は、これから加齢に伴い子宮脱(骨盤臓器脱)になるリスクはとても高くなるのです。
だとしたら、症状がなくても、今から積極的に骨盤底筋トレーニングをしていればそのリスクは軽減できるのです。
リスクは少しでも少なくした方が良い!今からでも遅くないので正しい骨盤底筋トレーニングをマスターしましょう!
正しい骨盤底筋トレーニングをして子宮脱のリスク回避!
正しい骨盤底筋トレーニングってどんなトレーニング?
今後に不安なAさん
それは骨盤底筋だけを動かすことができることです
ゆきえ
骨盤底筋トレーニングをしてこんな人は注意しましょう
- 左右のお尻をメチャ締めている
- 下っ腹に勢いよく動く
- 息を止めて押し出すように力む
- 全身力んでいる
- 足がプルプルするくらい力を入れている
このような動きをしている人は、骨盤底筋ではない筋肉を一生懸命動かしている可能性があります。
骨盤底筋以外の見える筋肉を動かして、トレーニングをやった気分になっている人も多くいます。
正しい効果的な骨盤底筋トレーニングは、骨盤底筋だけを締めてトレーニングすることです。
骨盤底筋は見えない筋肉でもあり関節運動がない筋肉ですので動いているかどうかは自分の感覚だけが頼りになります。
でも、そんなことを言っても上手く動かせないですよね。
そんな方のために、私から骨盤底筋トレーニングを効果的に行うために4つポイントを説明します。
骨盤底筋トレーニングの4つのポイント
骨盤底筋を鍛える時は、自分の骨盤底筋の場所をしっかりと認識し、
意識を骨盤底筋にフォーカスして動かすことが大切です。
頑張って骨盤底筋を鍛える体操をしていても、そもそも骨盤底筋を意識できないのなら効果的に動かしているとは言えません。
ポイント1:骨盤底筋の場所を認識する
骨盤底筋は体のどこにあるの?
今後に不安なAさん
簡単に言うと自転車に乗ってサドルに当たる部分が骨盤底筋ですよ。
ゆきえ
サドルって何となくひし形ですよね、骨盤底筋もひし形の形をしています。
それで、自転車に乗るとピッタリとサドルに当たる部分が骨盤底筋なんですよ。
また、椅子に座ると両方のお尻に骨が当たりますね、
その骨の内側の部分で恥骨から尾骨にかけてひし形の形をして広がっています。
椅子に座ってトレーニングをする時は、股間にタオルをあててトレーニングをすると骨盤底筋の動きを感じやすいかもしれません。
このようにタオルをロール状にして股間にあたるようにしてください。タオルで感じられないのならバスタオルなど大きくしてみてください。
ポイント2:骨盤底筋に意識をフォーカスする
骨盤底筋の場所が分かったら、そこをギューッと締めてみましょう。
椅子に座っていると座面に接しているので骨盤底筋が動くのを少し感じられるかもしれません。
ちょっと動いているかどうか分かりません…
今後に不安なAさん
分からなくても心配しないでくださいね。そういう方も多くいらっしゃいますから。
ゆきえ
動いているかハッキリと分からない人は、以下の方法で確認をしてみてくださいね。
排尿している途中で尿が止まるかどうか
しかし、尿道に負担がかかるためこれを頻繁にするのはダメ!
これらの確認で、尿を止めることができれば骨盤底筋が動いていることになります。
ポイント3:動かす時にイメージしてみる
そんな簡単に言われても動かないわよ!
今後に不安なAさん
Aさん、顔が変わってる!それほどイライラするってことですよね。では動かす時にイメージをしてみましょう。
ゆきえ
自分のお尻からしっぽがはえていると想像してください。そのしっぽをクルクルと自分の方向に丸める様なイメージ
尿道と肛門を前後でギューッとくっつけるイメージ
クリトリスをお辞儀させるようなイメージ
肛門を前後でギューッとくっつけたら、膣の中に皮膚がメリメリと入っていくイメージ
骨盤底筋は、インナーマッスルの1つで関節運動が伴わないためとても自覚がしにくい筋肉です。
そのため、イメージしながら動かすことはとても有効です!
ポイント4:骨盤を正しい位置にして動かす
骨盤が前に傾いていたり、後ろにズリっとしていると骨盤底筋は均整が保たれず効果的に動かすことができません。
そのため、骨盤底筋を鍛える時は、正しい姿勢を意識して動かしましょう。
もっと詳しい骨盤底筋トレーニングについてはこちらの記事を参考にしてください。
骨盤底筋トレーニングをするなら骨盤底筋をしっかりと意識しましょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
骨盤底筋トレーニングは子宮脱(骨盤臓器脱)に効くということはいろんなところで紹介されています。
しかし、それはどんな子宮脱(骨盤臓器脱)にも有効ではなく、効果のある時期はある程度限られているということです。
骨盤底筋トレーニングが子宮脱へ効果が見込まれるのは
- 子宮脱の症状が比較的軽い人
- 骨盤臓器脱指標のステージⅡの時期
ということになります。
また、今、子宮脱(骨盤臓器脱)になっていないからといって今後絶対にならないという保証はどこにもありません。
そして、そのリスクは、膣から出産している女性ならもっと高くなり、産後直後に子宮脱を経験した人やお産が大変だった人はさらに高まります。
早いうちから正しい骨盤底筋トレーニングで骨盤底筋を鍛えていれば子宮脱のリスクは軽減できます。
1回正しい骨盤底筋トレーニングをマスターすれば一生ものです。
そして、骨盤底筋トレーニングによって子宮脱(骨盤臓器脱)を回避できれば、治療のための時間やお金もかからずに済みます。
正しい骨盤底筋トレーニングに興味がある方は、ぜひご連絡ください。