こんにちは。看護師歴28年、 骨盤底筋トレーニング【YUI】の 北條裕紀恵です
出産後にくしゃみやジャンプなどお腹に力を入れた時、尿漏れして悩んでいませんか?
そして、その尿漏れは出産が原因だからと少し様子をみたものの全く改善せず
- このまま治らない?
- 歳をとるともっとひどくなるかも…
と不安になっていませんか?
実は、産後の尿漏れで悩んでいる女性はたくさんいらっしゃいますが当たり前ではありません。
そして、産後の尿漏れには骨盤底筋トレーニングが有効だと言われています。
今回は、産後の尿漏れついて分かりやすくお話しします。
産後の尿漏れの原因
産後の尿漏れは、くしゃみやジャンプなどでお腹に力が入り漏れてしまうのが殆どです。
このように尿漏れを腹圧性尿失禁と言います。
産後に起こる尿漏れは、膣からの出産の衝撃で尿道を支えている靭帯や筋肉などの骨盤底の組織が損傷されるのが原因です。
そして、分娩時に会陰切開・裂傷、吸引・鉗子分娩などの医療介入はさらに骨盤底の組織がダメージを受けると言われています。
会陰切開や鉗子・吸引分娩とは
会陰切開とは
膣と肛門の間の部分を会陰と言います。分娩時にはこの部分が柔らかく伸びることで赤ちゃんが外へ出やすくなります。
しかし、この会陰の伸びが悪く分娩に負担がかかる場合、医師の判断で切開を行うことがあります。
会陰切開の一番の目的は、分娩時の赤ちゃんへの負担を軽減するためですが、その他にもお母さんの体の負担を軽減するためや、会陰が複雑に裂けて周辺組織に大きなダメージが及ぶのを防ぐたにです。
以前の会陰切開の目的は、裂けて傷が深く複雑にならないためでしたが、現在では会陰切開が産後の骨盤底筋の支持力を低下させ機能障害の要因だと指摘されています。
また、厚生労働省委託事業 公益財団法人日本医療機能評価機構の【母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査−科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂−】の会陰切開の適応によると
分娩時の会陰切開は、ルーティンに行うことで、会陰部裂傷の頻度を減少させる効果や長期間後の骨盤底障害を予防する効果はないので、ルーティンに行う必要はない。したがって会陰切開は、胎児のwell-beingの観点から必要と認められる場合や、会陰部の大きな裂傷を介する場合に行う。ただし、会陰切開を行わない場合、陰唇裂傷などの前方損傷を増加させる可能性があるので、会陰保護手技を慎重に行う必要がある。
とあり、現在では会陰切開は以前より慎重に行っています。
鉗子・吸引分娩とは
2010年9月の日本産婦人科学会誌によると、鉗子・吸引分娩は分娩全体の9~15%を占めるとしています。
鉗子分娩とは、鉗子という2枚のヘラを組み合わせたような器具で赤ちゃんの頭を優しく挟めるような形になっています。
この鉗子で赤ちゃんのあごから頭をはさみ、お母さんのいきみと同時に赤ちゃんを引き出すのが鉗子分娩です。
吸引分娩とは、陰圧がかかる吸引機に繋がれた専用の器具を赤ちゃんの頭に密着させて吸引の圧力で引き出すのが吸引分娩です。
陣痛が弱く出産に時間がかかり、赤ちゃんやお母さんに負担がかかり思わぬトラブルが予想される場合、分娩をスムーズに行うために鉗子分娩や吸引分娩は行われます。
また、出産時にお腹を上から人がまたがり押されるのをクリステレル圧出法と言い医療行為の1つです。これも骨盤底の組織にダメージを与えると言われています。
会陰切開と鉗子・吸引分娩と産後の尿漏れとの関連性
会陰切開や鉗子・吸引分娩などの医療介入は骨盤底組織にダメージを与えます。
ただ、体はダメージを受けたとしても元に戻ろうとする力がきちんと働きます。
産後に骨盤底組織がきちんと元に戻れば問題ありませんが、そのダメージが残り何らかの症状を起こす場合があります。
その症状の中の一つに尿漏れがあります。
河内(2009)「出産後3年以内の女性の尿失禁と出産との関連性」の研究では
2004年5月~9月に調査 1000名に配布し有効回答者326名
出産直後から2ヶ月までに尿失禁を経験者は48.9%
出産後2ヶ月から現在までの尿失禁経験者は35.5%
出産直後から産後2ヶ月までの尿失禁には、会陰切開や吸引・鉗子分娩、クリステレル胎児圧出法などの産科医療との関連がみられた。
参考文献:河内(2009)「出産後3年以内の女性の尿失禁と出産との関連性」日本看護研究学会誌VOL32. No1( 2009)
また、高岡(2013)「産後尿失禁の有症率と分娩時要因の関連性の検討」でも下記のように述べています。
2011年3月~7月 首都圏で出産した421名に調査し有効回答403名
分娩早期(産後3~5日)の尿失禁の有症率30.8%、有症者の44.7%は産後3ヶ月においても症状が存在していた。
分娩早期の早期の尿失禁は、初産婦に多く、また妊娠中の有症者に高率で、会陰切開の経験者に多く生じていた。
参考文献:高岡(2013)「産後尿失禁の有症率と分娩時要因の関連性の検討」日本助産学会誌 27巻1号(2013)
このように、分娩時の会陰切開や鉗子・吸引分娩のような医療介入は産後の尿漏れに関連していることは先行研究でも明らかになっています。
産後の尿漏れどうしたら改善するの?
産後の尿漏れは、膣からの出産による骨盤底の組織へのダメージで起こります。では、どうしたら改善するのか?
それは、産後に痛みがなくなったら骨盤底筋を鍛えることが大切です。
産後の尿漏れには骨盤底筋トレーニングが有効
産後の尿漏れの大部分がくしゃみやジャンプなどで漏れる腹圧性尿失禁です。
腹圧性尿失禁には骨盤底筋トレーニングが有効であることは様々な研究で検証されています。
また、薬のように副作用が無いことから腹圧性尿失禁の治療の第1選択として推奨されています。
日本泌尿器科学会でも「軽い腹圧性尿失禁の場合は、骨盤底筋訓練で尿道のまわりにある外尿道括約筋や骨盤底筋群を強くすることで、改善が期待できます。」と言っておりその有効性は明らかです。
しかし、骨盤底筋を鍛えるためには正しく動かす必要があります。正しく動かすには骨盤底筋を意識して動いていることを確認することが重要です。
正しく動いているか確認するにはこちらの記事を参考にしてください。
骨盤底筋トレーニングをするなら骨盤底筋をしっかりと意識しましょう!
産後の尿漏れに効く骨盤底筋トレーニングはいつからやっていいの?
産後に尿漏れ!ショック!骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)しなくちゃ!とすぐに始めたい気持ちは凄く分かりますが…
早く始めたからといって骨盤底筋を鍛えられるわけではありません!
なぜなら、出産直後のお母さんの体は妊娠前の元の体に戻ろうとしていろんな組織が頑張っている時期だからです。
特にダメージを受けた骨盤底組織は分娩直後は傷ついて浮腫んでいるためまずは安静が必要です。
そして、産後の体がゆっくりと戻る期間を産褥期といい産後6週間~8週間です。
この期間は、あまり無理をしない方が良いとされています。骨盤底組織も傷が癒えていない所で一生懸命動かしてしまうのは逆効果になってしまいます。
そのため、骨盤底筋トレーニングは陰部の傷の痛みが癒えてから行いましょう。
産後の尿漏れは少し様子を見て
産後の尿失禁は分娩による骨盤底組織の損傷が主な原因となりますが、女性ホルモンも関係していると言われています。
そのため、産後直後から尿漏れがある場合、すぐに治療をするのではなくホルモン状態が安定するまで様子を見ることが多いです。
産後の尿漏れ治療開始時期に関しては、母乳の状況で女性ホルモン状態も変わることから正しいマニュアルはありません。
しかし、産後のお母さんの定期健診は産後1ヶ月で終了する場合が殆ど(病院によっては+αがあるようです。)で、1ヶ月後に何か問題があった場合でも3ヶ月後には終了してしまいます。
そのため、産後1ヶ月の定期健診時に尿漏れがある場合は医師に相談してみましょう。
そして、早めに骨盤底筋トレーニングを始めたい人は、その産後1ヶ月の定期健診時に骨盤底筋を鍛えていいか医師に確認しましょう。
以前の日本女性骨盤底医学会では産婦人科医からは、産後の腹圧性尿失禁に対する積極的な治療は母乳を早めに終了しても6か月後、そうでなければ9か月後と言っていました。
産後生理が始まり妊娠前の状態に戻っても尿漏れがある場合は病院で相談してみましょう。
しかし、傷の痛みが消失したら骨盤底筋トレーニングを積極的に行った方がベターですので、産後1ヶ月健診時に担当医にトレーニングを始めていいか確認しましょう。
産後の尿漏れの実情は
骨盤底筋体操外来で指導をしている時、産後の尿漏れの方々を沢山みてきました。
そして、産後の尿漏れで多かったのが「もう直ぐ職場復帰するので!」と育休が終わって翌月から職場復帰なんです!と言う方。
お話を伺うと、「そのうち治ると思って様子を見ていたけど、いよいよ来月から職場復帰、でも全然治らないから受診しました。」と言う方が多くいらっしゃいました。
河内(2009)「出産後3年以内の女性の尿失禁と出産との関連性」の研究でもそのうち治ると思うから」と答えた人が全体の54.6%ありました。
また、出産したところの病院で骨盤底筋トレーニングの指導の有無を確認したところ、口頭だけの説明だけでやり方は教えてもらっていないという方も少なくありませんでした。
そして、職場復帰直前でトレーニングに来ても翌月から仕事のため通院が難しく、1回の指導で終わってしまう方も沢山いらっしゃいました。
産後の尿漏れを改善するために
産後の尿漏れを改善するためには骨盤底筋トレーニングが有効です。
そして、産後に尿漏れにならないためにも妊娠前から骨盤底筋を鍛えておくことが大切です。
骨盤底筋を鍛えるためには骨盤底筋が正しく動いているか確認することが重要であり、ヒップアップやスクワットのような動きだけでは効果的に鍛えられません。
骨盤底筋は体の奥にあるインナーマッスルであり、関節運動がないため自分で動いているのかを確認することは難しいのです。
そのため、骨盤底筋トレーニングをしている女性の25%が間違った動きで逆効果というデータもあります。(Bump 1991)
正しい骨盤底筋トレーニングについて知りたい方はこちらの記事をどうぞ
骨盤底筋トレーニングの正しいやり方 あなたはきちんと動かせていますか?
まとめ
今回は、産後の尿漏れについてできるだけ分かりやすく書いてみました。
女性にとっての尿漏れは言い辛い症状の上位でありデリケートな問題です。
産後の尿漏れは大きい赤ちゃんが産道を通って外に出てくることを考えれば、それ相応の衝撃がその周辺にあることは想像できます。
しかし、産後の尿もれは当たり前ではありません。
- 出産したから仕方ない
- そのうち治る
と放置するのは絶対にやめましょう。
今からすぐにできるのは骨盤底筋トレーニングです。そして、骨盤底筋を鍛えることは女性にとってメリットしかありませんから今からマスターしておきましょう。
お申し込み
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